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ひと口に家を建てるといっても、その方法はさまざまです。
ほとんどの方々にとって、家を持つということは一生にそう何度もあることではなく、大変勇気のいることではないでしょうか。
そこで、今回はわれわれ建築家との家づくりのプロセスと、そこにこめられた思いをお話して、家づくりの参考にでもしていただければと思います。

最終的に選んだ土地。
細長い形状を最大限に活かす「平屋」の構想が生まれた。
Sさんご夫婦がそろそろ家をと考えはじめたのは3年ほど前でした。
小樽に住みたいという強い希望があったので、まず土地探しに取りかかり、気になる土地をみつけ、私の事務所に相談にいらっしゃいました。
早速一緒に見に行き、小樽らしい石積み擁壁(ようへき)と細長い形状を持つ、この敷地を私も一目で気に入りました。

ラフスケッチ
まずは、Sさんご夫妻とじっくりお話をさせて頂くことからはじめました。
夢、大切なもの、家族のこと・・・お話をうかがう内に、施主にとっての家はどういう場なのか、どのような暮らしを望んでおられるのかが、おたがいに少しずつ見えてきます。
ご夫妻の基本的な希望は「開放感がある家がいい」「狭くて、こもる感覚の部屋がほしい」「趣味の楽器が弾ける部屋がほしい」ということでした。
そして、最初は手描きのラフスケッチをお出ししてさらなる対話を重ね、プランを煮詰めていきます。
最終的には模型などを使い、立体的なイメージをつかんでいただくと同時に、コストの概算と工程表で、全体の流れを確認していきました。

1/100スケールの模型

平面配置図

工事を通して使い込まれた設計図書
いよいよ本格的な設計がスタートです。
2週間に一度ほどのペースで打合せを続けながら細部を詰めていきます。
模型やイメージ写真、サンプルなどを使い、その空間のなかで生活しているシーンをなるべく具体的に思い描いていただきながら、一冊の設計図書(仕様書・意匠図・構造図・設備図等で工事の方針・内容を伝える図面)にまとめていく作業です。
設計図書をもとに工事見積を取ります。施工業者候補は施主と一緒に相談の上、見積調整をしていくなかで検討、選定していきます。

着工工事が始まる

外壁羽目板を自ら塗装するSご夫妻

現場監督との打ち合わせ風景

自ら塗った外壁羽目板が貼り上がる
施工業者が決定し、工事がはじまりました。
基本的に週に1回程度、なるべく施主も一緒に現場で打合せを重ねながら進めていきます。
Sさんご夫妻には外壁の塗装やテーブルのサンダー掛けなどの作業に参加してもらいました。
コストダウンだけではなく、自ら手をかけることで、愛着が湧き、そこに物語が生まれます。
着工から約3ヶ月半、S邸『HIRAYA』が完成。約21mの奥行きをもつのびやかな平屋は、特色ある敷地を十分に生かすことと、Sさんご夫妻のくらしのイメージを重ね合わせ、生まれたものです。

中庭より室内を見た、夕景の建物外観

エントランスホールからリビング方向をみる。
手前にみえるのはネコ棚を兼ねたロフト階段。

敷地の特徴でもある石積み擁壁を抽象的に切りとった開口部をもつオーディオ・シアタールーム。
カーテンを兼ねたプロジェクター用スクリーンが窓上に格納されている

バスコートにつながるオープンで気持ちのよいバスルーム

リビングからキッチンへの見返し。
両サイド、低い目線からの眺めを考え、高さを抑えた連続窓が「うち」から「そと」へといざなう。
開放感もある。
「不思議なほど、すぐになじんだんですよ。入居してすぐに、もう何年も住んでいる家みたいでした。」
私にとって、何よりもうれしいSさんご夫婦の言葉です。
家を建てることは、自身、そしてご家族とじっくり向き合い、対話することです。
こうしてさまざまな想いをくぐり抜け、手間と時間をかけてつくりあげた家は、言葉を超えた力をもち、心に響く場となります。
世間で一般的に言われる「ゆたかなくらし」ではなく、あたなにとっての「ゆたかなくらし」を一緒にかたちにしていく、こんな家づくりはいかがでしょうか。
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